特集:研究開発で
アドバンテストと旧Verigy、それぞれには得意とするコア技術があり、それらを融合することで、グローバル市場のニーズに適合する競争力ある新製品を開発することができます。当社では現在、日米双方の研究開発チーム間の緻密な協業を推進しモノづくりに関する考え方やスタイルのギャップを超えた新しい研究開発のスタイルの確立を目指しています。
T5831ES
2012年4月の経営統合によって、アドバンテストの研究開発は、日本、米国、欧州、中国の世界4拠点体制で推進される形になりました。今後は、アドバンテストと旧Verigy、それぞれが得意とするコア技術を融合させながら、グローバル市場のニーズに適合する競争力ある新製品をタイムリーに供給していく計画です。
この新しい研究開発体制による最初の開発成果が、次世代NANDフラッシュ & MCP(マルチ・チップ・パッケージ)向けテスタである「T5831」シリーズです。
この新型テスタの開発プロジェクトがスタートしたのは、統合決定直後の2011年7月。当時、スマートフォンの普及などを背景にフラッシュメモリの需要が増大しつつありました。目指したのは、次世代の高速NANDフラッシュやMCPへの対応はもちろん、より高スループットでお客様の生産性向上に大きく貢献する新型テスタの開発。統合を機に互いの技術力とノウハウを結集し、“デファクトスタンダード”となる次世代テスタの開発を目指すプロジェクトが立ち上がりました。
開発にあたって、日米双方の研究開発チームは、約3カ月を費やしてそれぞれの保有する技術、ノウハウ、得意分野などをすべて開示し、相互理解を深めながら、双方の強みが活かせる開発体制づくりに努めました。測定モジュールのアナログ関連技術やCPUとその周辺のアーキテクチャの技術で豊富な蓄積を持つ米国研究開発チームがテスタの測定モジュールを、装置全体の機能や操作性などの設計において優れる日本の研究開発チームが在来機種との共通部分の開発を担当する体制を整備しました。
ただし、両チームの間には、設計ルールや量産化までのプロセスなど、モノづくりに関する考え方やスタイルの違いがあり、エンジニアたちは開発を進めながらこれらのギャップを埋めていく必要がありました。例えば、日米で異なっていたソフトウェアのOSは、日本側で研究開発されていた「FutureSuite」を採用することで一本化を図り、設計・開発を担当した米国の技術チームに対して、日本側から設計支援などを行い、米国研究開発チームを効率よくサポートしました。そして、こうした日米のエンジニアたちの緻密な協業によって、日米のテスタ開発チームは、次世代NANDフラッシュ研究開発用途向けの「T5831ES」を当初の計画通り、2013年4月に出荷。現在、量産用途向けテスタの開発が進められています。
アドバンテストでは、今回のプロジェクトで培ったノウハウを活かし、今後、世界各地の研究開発拠点の技術力や優れた開発手法などを融合させた新しい研究開発スタイルを確立し、「先端技術を先端で支える」という経営理念をワールドワイドで実践していきます。
Staff Voices
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- テクノロジー開発本部 川崎 俊史
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相互理解を深め、円滑な共同開発を推進
このプロジェクトでは、米国の開発チームが日本側の開発ルールに則り、テスタの試験機能をつかさどる PE (Pin Electronics Board) など測定モジュールの設計・開発を担当しました。そこで今回は、日本から私たちがプロジェクトに加わり、PEの設計・出図・試作・評価までをサポートしました。日本の開発ルールを理解してもらうのはもちろん、相互の信頼関係を築くことで、円滑に開発を進められるよう心がけました。今後も世界各地のエンジニアとの交流・相互理解を深めながら、よりスムーズな共同開発を推進していきたいと考えています。
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- Americas Memory Test (AMT) Vince Lopopolo
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互いの優れた部分を新しいプラットフォームに統合
私は、本製品のプログラムマネージャー兼機械設計のマネージャーをしています。製品の共同開発を成功させるためには、開発プロセスや設計技術などに関して、アドバンテストと旧Verigyそれぞれの優れた部分を、新しい製品開発プラットフォームに統合する必要がありました。プロジェクトの過程では、さまざまな試行錯誤がありましたが、結果的にはアドバンテストの技術について多くの知識を獲得できたほか、強固な信頼関係を築くことができました。これらは、今後、最先端のメモリテスタを効率的に共同開発していく上で大いに役立つはずです。
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