基礎講座 テラヘルツ波について
基礎講座 テラヘルツ波について
一般にテラヘルツ波は、その周波数が電波と光の間に位置する電磁波を指します。
上図の様に、同じ電磁波の仲間である電波や光は、既に社会のさまざまなところで応用されていますが、テラヘルツ波は、これまであまり応用されていませんでした。しかし、テラヘルツ波には、以下の様な魅力的な特徴があり、様々な分野で役立つことが期待されています。
テラヘルツ波の特徴、物質との関係
- 電波のような透過性
テラヘルツ波は、様々な産業の素材となっている紙、プラスチック、セラミック、木材、繊維などを良く透過します。そのため、これらの内部の目に見えない部分の情報を非破壊で得ることができ、新しい非破壊検査への応用が期待できます。また、他の電磁波と異なりこれらの素材のわずかな違いや変化を感度良く検出できます。 - 光のような直進性
テラヘルツ波は、レーザー光線のように直進する性質をもっています。そして波長が数百~数十ミクロンであるため、被測定物に照射して透過または反射してきたテラヘルツ波を面や空間でとらえると、人の目と同程度の分解能で画像化することができます。つまりプラスチックや木材の内部を透かして見ることができるのです。 - 化学物質を見分ける目
あらゆる物質は、原子同士がバネのようなもので結ばれていると考えることができます。テラヘルツ波や光(赤外線)を化学物質に照射すると、ある特定の周波数でバネの振動と共鳴して電磁波のエネルギーが吸収されます。この特性が化学物質ごとに異なるため、物質が何であるかを見分けることができます。つまり、あらかじめこの特性を記憶しておけば、錠剤などの医薬品を非破壊で見分けることが可能です。 - 安全な電磁波
テラヘルツ波は、X線などの放射線と比較して、極めてエネルギーが低いため、人体に対して安全であるという特徴があります。
テラヘルツ波による応用が期待される代表例
- プラスチックやセラミックを素材とする加工品の非破壊検査
- 医薬品の製剤研究における分析や製造ラインの全数検査
- 郵便物等に隠蔽された禁止薬物の検出
- 食品、農産物の品質検査
- 皮膚や生体組織の診断